INTERVIEW 07 | エフスタイル(新潟県新潟市)

*この記事は旧KŌSAの記事を再掲載しています。

ものを作って売るという入口と出口が滞りなく循環していることが
私たちの一番の理想なんです

新潟を拠点に活動するデザインユニット・エフスタイル。
「製造以外で商品が流通するまでに必要なことはすべてやってみること」をモットーとする彼女たちの視点はとってもクールだ。新潟市にあるオフィス兼ショールームにおじゃまして、エフスタイルのものづくりについて話をうかがった。


エフスタイルの世界観

新潟駅から25分ほどバスに揺られ、終点の女池愛宕で下車。上越新幹線の高架下をくぐり抜けて少し歩くと、白くて四角い建物が現れる。新潟を拠点に活躍するデザインユニット・エフスタイルのオフィス兼ショールームだ。

中へ入ると、ガランと広い吹き抜けの空間に耳あたりのよい音楽が流れている。余白が美しいディスプレイには、エフスタイルが手がけた商品群が並ぶ。そのひとつひとつは、ゆったりと呼吸をしながら根を張ったような真っすぐな美しさを感じさせる。

エフスタイルの五十嵐さん星野さんも同じような空気感をまとい、一瞬でエフスタイルの世界観に引き込まれてしまった。

Fという役割

エフスタイルのエフは鉛筆のFの硬さ。
BやHには様々な硬さのバリエーションがあるのに、Fだけは毅然とした態度でFとしてあり続ける。さらには気の利いたFの硬さに、一度使うと虜になってしまうことも。

「鉛筆の硬さをデザインに例えると、Hはちょっとストイック過ぎるというか。HBは一般的で量産品。Fはそれらのちょうど中間にあるイメージです。細かい感覚のところにFがあるのだけど、必要なポジションでもあって」。

そんな中間的な領域に役割を見出だしたエフスタイルは、ものづくりの作り手と売り手、買い手をつなぐ担い手として、商品の企画開発から検品・流通までを一貫して行っている。

週2日だけのショールーム

ショールームがオープンするのは、月曜日と土曜日の11時から18時まで。
帳場を彷彿とさせるローテーブルの前に座ってレジの接客を行う星野さん。プレゼントを買い求める女性が訪れ、庭先で育ったユーカリをアレンジしたコサージュをラッピングに添えて、商品を丁寧に手渡す五十嵐さん。
さりげないけど美しい、エフスタイルの小さなこだわりが散りばめられた空間に佇み、ゆったりとものと向き合えるひととき。

ハンドフックという手作業で職人さんが作るマット、新潟の山間部で古くから伝承される民芸細工・シナ織で作るバッグ、足首を締め付けない柔らかいはき心地の靴下、かつては農民たちが丈夫な野良着として愛用していた綿織物・亀田縞で作る現代の日常着。
エフスタイルが手がける商品は、ごくごく自然体でまったく気取ることがない。そぎ落とされた潔いデザインに心地よさ感じるのは、これらを製作する作り手の愛情を無意識に感じ取っているからかもしれない。

ものづくりの循環

ショールーム奥の右側に畳の部屋、左側に作業台とストック棚が備え付けられた部屋。このふたつスペースで、商品の検品やパッケージ付けなどの出荷準備を行っている。

エフスタイルの代表作である犬のマット「ハウス ドギーマット」は、工場から半製品として納品され、ここで最後の仕上げ作業を終えてようやく各ショップへと発送される。マットの仕上げを担当する五十嵐さんは、ハサミと掃除機を使いながら慣れた手つきで形を整えていく。

この自ら検品を行うという作業も、作り手や売り手と直接やりとりをする中で、気づいたこと感じたことを業務として実行しているという。エフスタイルが考えるものづくりの好循環とは、作り手、売り手、買い手の三者のストロークが調和し、帆を上げて循環していけることだ。

「私たちは、ものを作ることにだけに興味があるのではなく、作ったものを手渡すところまでをゴールにしています。ものを作って売るという入口と出口が滞りなく循環していることが、私たちの一番の理想なんです」

エフスタイルのものづくりのあり方を、買い手側である私たちはどのように感じ取っていけるだろうか。

今に集中すること

五十嵐さんと星野さんが出会ってから20年が経過しようとしている。
しかし、これまでの活動に捕らわれることなく、いつでも身軽にかたちを変えながらエフスタイルを続けていきたいという。

「今というところに集中することがすごく大切だと感じています。過去のものにとらわれて今に集中できなかったら手放したほうがいい。今必要なのか、必要じゃないのかだけなのかなと。そこをクリアにして余白を作っておけば、新しい出会いや新しいものづくりが広がるかもしれません」

エフスタイルの商品が放つ真っすぐな美しさとは、彼女たちの考え方そのものだ。聡明なまなざしの先には、これまでの経験から育んだ感性が備わっている。
Fというスタイルは、きっとこれからも二人の感性と共に変化していくのだろう。

F/style (エフスタイル)
五十嵐恵美、星野若菜によるデザインユニット。東北芸術工科大学を卒業した2001年春、地元新潟にて「エフスタイル」を開設。デザインの提案から販路の開拓まで一貫して請け負う。山形や新潟の伝統産業と「今」を結び、使い手へと商品を届ける活動を行っている。著書に「エフスタイルの仕事」(アノニマ・スタジオ)等がある。
www.fstyle-web.net

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